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本の感想、雑感、小論考など。 小説、簡単なエッセイはこちらで→「テイタム・オニール」http://ameblo.jp/madofrapunzel2601/
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 昏く強い場所――アイドルと性愛(3)
 周辺へと閉じ込められ、しかしそのことによって逆に性愛はパワーを持ち、あるいは一定の様式を維持する。
それが、「位く強い場所」と呼ぶ性愛の空間です。
 クリアで健全な社会――というより、表向きのアイドル現場は、(AKB時代の存続で)「恋愛禁止」ということが常態化しており、それはとうぜんにもアイドルメンバーとファンとの間にも適用されていきます。
 しかしAKB(の様式)がもたらした中の一つは、「アイドルとファン」との近接性。
「会いに行けるアイドル」というのは、まずもって身体的な近さ(握手会、劇場の狭さ)をもってすることで、心理的及びその他の近さを実現するという、画期的な試みであった。 (このへんはフーコーっぽいですね)
 そしてAKBがその2000年代に原点として「近接性」をもたらしたのだとすれば、それをうけるロコドルたちは近接性をうまく使用していきます。
 福岡の事例になりますが、その「近接性」をまず実際面でさらに展開した一連の動きがあります。福岡老舗ロコドルの、HRの「3分間物販制」です。
 このシステムは福岡で一番売れているLinQにも接ぎ木され、またたくまに物販体制のお手本になりました。
この3分間物販制というのは、HRだと公園が終わってから公演に出演した全メンバーが椅子に座って待機しています。ファンは(お金で買った)コインと引き換えに、1枚写真をもらい、それをサインしてもらいます。
 サインの時間に3分も必要ありません。ですから、この時間は話ができる時間となります。
 AKBも初期は違うのですが、流行した今はどれだけ長くても一回15秒しゃべれるのが限界、と聞いていますから、3分は絶大です。コインを投入すれば間隔をあけてさらにしゃべることができる。
 この時、アイドルとファンの関係は、極めてフラット、水平的なものに近くなっていきます。しゃべるのも、公演の様子は勿論、最近どうだった、とか、学校でこんなことがあって、とか、ものすごく「個人的な」話までできることになります。
 ここに見られるのは垂直的な関係から水平関係への雪崩込み。構造としての。
 その結果、アイドルとファンとは激しい近接性で結ばれ、その結果「ガチ恋」や「繋がり厨」と呼称されるファンもたくさん出ることになります。
 福岡にいれば、このアイドルはこのオタクと付き合っていた、今付き合っている、付き合っていたからクビになった、という話が嫌でも耳に入ってきます。
 先に話したように、あらかじめ「恋愛禁止」の札を公然と貼られているのはアイドルのみなので、しかもそれがスキャンダラスなものとして設定されているので、このルールを破るということがいかに昏いものかは分かると思います。
 しかしこうした場所での性愛(恋愛およびセックスなど)は強い。強いという形容はおかしければ、倒錯的なものに対しての「本来的」な場所です。
 つまり、恋愛(というかセックス)をするなという人間の本能的な行いを禁じられた空間において、禁忌の場所として閉じ込められた性愛の領域は、それを破るものにのみ、本来の「本能にフツーに従った恋愛」を育むのです。
 これが私の「暗き場所の性愛様態」と呼ぶものです。
次は、クリアで健全な方で起こった変化について論述します。
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