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 昔書いた短い文章ですが、ふと思ったので、再掲。
この頃はたぶんドゥルーズの『批評と臨床』を読み終わって深く影響していて、ドゥルーズの文体・思想ともども多く引きづられています笑

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溶け合うこと朝吹真理子『きことわ』

 

 物と物との間の区別、あるいは2つの領域の間がどうでもよくなるくらいに曖昧になって、或いはそれらが一つの<場>を形成していく、そのことのカタルシス。たとえば、夢/現実の区別。永遠子の夢は、現実の現実性(レアリテ)そのものに対して強い楔を打ち込み、その夢もまた消去して/されて、2つの領域をどうでもよくさせる。現実にいったい何の力があるというのか(そして夢とは何と強力であるか)。また、この物語は記憶をめぐる系列(セリー)にも関わっている。二人が再会する葉山町の家は完全に時間軸を狂わせる。そこでは断片化された記憶が交互に展開され、狂おしい生を余儀なくさせる。狂気と表裏である美しさ。

 それにしても何と朝吹氏の文章はきれいであることか。彼女の美学としてのエクリチュールが『きことわ』でも全面に展開されている。

(了)

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