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ペンと紙から何が生まれるか? 聖書の新しい解釈、革命理論、ジャン・ジュネの獄中手記……。通常の力とは無縁の、ある種の仕方での力が生まれるのだ。精神的力動。それはすぐさま届かず、家族や友人に届かず、時を超え、空間を超えて、二百年後の地球の裏のみすぼらしい少年によって初めて読まれるのだ。新しい歴史の証人としてお前の名前は刻まれるだろう、墓碑に、紙に、そして様々な人々の脳裏の裡に。
あまりに騒々しい、テレビ空間とネット空間。テカテカにムースを塗り付けた髪の男が言う、「お宅の家に夢は要りませんか!」 要らない情報ばかり、不必要なものは私たちの体内の奥底に溜まって、異臭を放つ。塵に等しい社会。百本足のムカデが走る、浸食する、私の体内と、テレビ空間を。喰らえ、喰らえ、なじって、喰い尽くし、ただ屍をのみ貪り食う悪魔となるのだ……お前は人間の魂の掃除機であり、ついに人間は蟲たちに取って代わられた。
金色の髪の子、茶色の髪の子、創造性がない。自由な髪の色を許さない社会は、自由を重んじていない。紫色の髪色をしたコンビニ店員、マックで見かける緑色のメッシュが入った男、失恋したあとにショッキングピンクに染め上げた貴方の髪の整い。職業柄が悪い、挑発的だから悪い、そういうのが馬鹿げていると思うのに、いつまでたっても変わらない。
死人が世界を歩く。死人は既にあの世の世界だ。死人は現世に戻ってきている……だが何の為に? 死人の行進。だれだれが、いつ死んだ、島で死んだ、どう死んだ、自殺、他殺、交通事故、強姦、戦争、世界の数だけ死の理由があった。死人は何を求めてこの世を行進するのだろう? さらなる生を求めてか? 死人の一人がこう叫んだ、「なんだぁ、ここも地獄じゃねぇか!」 それを教えるためなのか、つまり、あの世は作られる必要がなく、ここでこうして生きていること自体が死に没入していることと等しいのか。死は栄光となったのだ。今や死にたがる人が一番多く、それを勝ち取ったものは栄えある聖者である――。
敵がいる! 目の前にだ! 敵をやっつけろ! 敵は機械だ、機械をはちゃめちゃに壊してしまえ! 我をぼろぼろになるまで働かせ、金もくれず、ただひたすらに従属させるこの機械……剥き出しの暴力なら此処にある。鉄パイプを振り回す、ガラスが割れる、エンジンが破壊される……。人間、お前も歯車の一部だ。人間、お前も所詮〈機械〉の一部品に過ぎないんだよ……。なにぃ、敵は私の中だ! 私を殺せ! 私ごと殺せ! 脳を拳銃でぶっ放す。
日が窓越しに確認できるのは良いことだ……部屋の内と、外で分かれる。涼しいクーラーの風が入って、心地よい。日はそれだけでエネルギー。ベッドに横たわって、まだ許される惰眠にかじりついている人もいる。あと熱いコーヒーさえここにあったらなぁ! 静謐を好む。静謐の中に感じ取れる、心の、精神の、内的情動が好きだ。そういう世界で生きていたい。それはただの願望かも知れない。でも太陽は誰にも等しく在る。空気のなかの熱の粒子となって……そして窓越しに現れるのだ、幾度も幾度も、はじまりの合図として。
(続く) misty
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