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本の感想、雑感、小論考など。 小説、簡単なエッセイはこちらで→「テイタム・オニール」http://ameblo.jp/madofrapunzel2601/
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又、こうも言う……。

・シャワー

熱の粒。〈一粒〉〈一粒〉の滴が上方から螺旋状に皮膚を表面を凪いで削いで廻りつたわりつたっていく。〈一粒〉は臍のあたりで集まりはじめてすこしずつ大きくなりまた一つの〈水〉をつくる。水滴は熱を内在的に持つか。液体の温かみ……くしゃくしゃになって汗に絡み絡まれた髪の毛に覆いかぶさって油と水はひとまず混合する……この風呂場という場に於いて。なおもシャワーのゴム管はぐにゃりぐにゃりと弱まった蛇のように巻き/巻かれてシャワーの〈水〉をあたりに撒き散らす。事故―事件。思わぬところ不意をくらって急いで〈温水〉を止める、、、キュッキュッという蛇口をひめる金属が擦れる音。静か、なんだ。外の光が差し込んでくる――真昼間の只中。独りでこの独房に収められているのだここは監視カメラが仕掛けられているんじゃないのかい。努々気をつけなよ。視点の錯綜。ふたたび〈身体〉のなかへ戻り、眼を瞑る……。もう一度じゃぐちをキュッキュッとひねってはとび出だしたるは温水、針のごとくに顔の皮膚に優しく柔らかに流るること如何に。飛ばしていく、意識を、洗い流していく。〈身体〉の流れは、〈温水〉とともに混じりあって床のつめたいタイルの端っこ、排水溝にすべて消えていく……。火照る。熱くなる。夢の感じだからね。ここは風呂。まだ流し足りない。そのうち、光る。皮膚が光ってゆく。我ハ発行体ナリ。シャワーに絡み/絡まれ、ワタシと共に一緒になって、温度の感覚ただそれのみに向かって。

 

又、こうも言う……。

・鈍行電車

橙に染まった物質の一節にするすると、まるでするすると侵入し、一区画を横領する。外はまた橙色に染まっていた。ひきずったようなひきずられている身体に心地よくまとわりつく緑色の記憶たち……。まどろむわけでもなく、覚醒するでもなく、いつも私はこの場所でぼんやり、ぼんやりとしていた。心地よいのだ。世界はひとまず消失に向かい、別世界がそのうち開けてくる。「トンネルを抜けると静謐であった」。キズ。疵。壁面を細かく眺めていると、あれよあれよとたくさんの落書きが書かれてある。座席にもあちらこちら。I  Love You、ユキとツヨシは永遠の絆、タクヤと付き合えますように、マブダチ宣言!、うちらは最高のふぁみりぃ、幸人先輩大好きっ、等々――。ああここには愛が刻まれている。安っぽくて俗でありきたりで健やかで愛おしい、そんな愛の文字たちがガラス窓に映る夕日のきらびやかな反射を受けて輝いているのだ! 愛するものが流れていった。誰かがここに座り、誰かがここに愛を書きこみ、誰かがここを立ち去る。夥しい人の流れがこのシート一つ分にさえある! 日は西へ傾いていく。目的の駅が近づいてくる。人はまばらに動き始めた。愛の流れ。

misty

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